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大竹しのぶ

  この人なら「日常生活よりも舞台の上の方が解放されています」と言われても、誰もが納得するはずだ。けれどこんな発言をされるとどうだろうか。
「台本はほとんど一回しか読みません。役作りですか? それって何? っていう感じかなぁ。昔、恋人の設定で共演した男優さんに、僕達は何故別れることになったと思いますかって聞かれて、何も考えていなかった自分に気付いて、はーっと思っちゃいましたから」
 あくまでも屈託のない笑顔で言う。
 大竹しのぶがいる稽古場を訪ねて気付くのは、この人の台本の美しさだ。他の役者のそれのように丸まっていたり汚れたりしてしない。たいていは稽古開始二、三日でその手から離されてしまうのだけれど、稽古終盤になっても書き込みやラインが引かれた跡すらない。
 約三〇年前。一七歳でデビューした時に、故・浦山桐郎監督が言った。
−−−台詞は自分のものだけでなく全部読みなさい。そうすれば自分の台詞がフワンと浮かび上がって来るから。
 役は作るものではなく生きるもの。今も恩師の言葉に忠実なのだ。
 ただ変わったと言えば、時間だろうか。 一〇代の頃は猛烈に忙しかった。二四歳で結婚するとすぐに子どもが産まれ、病に倒れたご主人の看病も加わった。その後二人目の子どもを産み三〇代で復帰してからは、育児と仕事を完璧にこなす母であり女優だった。
 今子どもは大学生と中学生になり、親離れの時期だ。自分の時間がもてるようになったといって間違いない。
−−−さて、新しい恋は如何ですか?
 そう聞く前にインタビューの時間が終わってしまったことが、返す返すも残念でならない。


 

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