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阿川佐和子

 「考えてみれば私って、餃子屋の女将みたいなもんですわよね」
 突然微笑みながらそう言い出した。
「だって随分たまったわねなんて思っていると、もうお客さんが全部食べちゃって、次の注文が来てるんですもの」
 思えばこの一〇年間、阿川佐和子の四〇代は餃子の皮ならぬ押し寄せる仕事に追いまくられる日々だった。
 〇三年は九冊もの単行本を上梓した。その他にもテレビ出演、七本の雑誌連載、グラビアモデル、そしてCM出演と、まさに八面六臂の活躍だ。
 その原動力は何か。人気の秘密は何か。例えばインタビューで大竹しのぶに「何で野田さんと別れちゃったの?」とシレッと聞ける秘密は何か。
「ある評論家にね、それはアガワの人柄だと書かれて、それは褒め言葉なのかどうか悩んだこともございまして−−−」
 今からは想像もつかないが、その二〇代は暗澹たる日々だった。「今から二〇代に戻れるとしても、私は全然戻りたくないわ」と言うほど性格も暗かった。
 お見合いを繰り返しても嫁ぎ先が決まらない。編み物の仕事も続かない。このまま三〇代になるのかと暗い気持のままに、アルバイト感覚で始めたテレビの仕事から道がひらけた。
 それから約二〇年。よもやこんなに輝く五〇歳になろうとは。今、JRの駅には彼女のこんな言葉が掲げられている。
「ニンゲンいくつになってもお楽しみはこれからなんですな」
 この達観こそこれからの武器であり、魅力の源泉になるに違いない。


 

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